
一部慶応大学生の聖地、二郎についに行ってきた。
二郎の名前くらいはずっと前から聞いたことがあったわけだが、10年ほど前に私が始めて遭遇したジロリアン氏は「わざわざ行く必要ないですよ、別に美味しいものでもないし....でも私は時々無性に行きたくなるんですが」と自嘲気味に語っていたものだ。
で、行列もあるわけだし、美味くも無いらしいし、ということで、気にならないことも無いが、行きたいというほどではない、と放置され続けていたわけだ。
ところが、昨年知り合った別のジロリアン(ジロリアン2号)氏は「絶対行くべきですよ」と何度も力説するのだ。まあ、そこまで言うなら、と、機会を窺うでもなく窺っていた9月某日、三田に聳え立つ某社本社ビルに午後3時というおあつらえ向きのアポがあり、この日を逃したら一生行けないのでは?という気合と共に午後1時半頃二郎着。
行列は10人も無いくらいか?まあ、20分も待てば入れるでしょうということで、ハリーポッターを読みつつ時間を潰す。
やがて順番が来て、噂に聞く「ニンニク入れますか?」の質問が私に投げかけられた。確か上級者はここで、「何とかかんとか」と答えるんだったな、とどこかのサイトで聞きかじった情報を思い出しかけるも、詳細不明につき初心者らしく「ハイ」と返事。その後、入れられたニンニクの量にちょっと後悔(分かりにくいが写真右上の方にみじん切りニンニクがごっちゃり)。
取りあえず食べ始めるわけだが、熱いのとてんこ盛りでこぼれそうなのとで非常に食べにくい。味は微妙。美味いってほど美味くないし、まずいってほどまずくないし..いずれにせよ、独特感は相当にある。どこかのラーメンに似ている、とか、醤油ラーメンだとかとんこつラーメンだとかいったカテゴリーにピタッとはまったり、とかいう味で無いことは確かだ。ジロリアン2号氏も言っていたように、これは「ラーメンではなく、二郎という食べ物」なのかも知れない。
と、今無理に思い出して味の話をしているが、食べている最中に味のことなど殆ど気にしていなかった(いられなかった)。
とにかく一番大事なのは、「今この空間にいる」ということであり、次に大事なのは、「目の前に(超てんこ盛りの)丼がある」ということだったのだ。それは即ち、私はスタート地点に立っており、私の前には42.195kmがある、ということなのだ。
だとすれば、一歩一歩孤独な戦いを続けるしかないではないか。
が、戦いは容易なものではなかった。熱い(暑い)、食べにくい、減らない、の三重苦が私を襲うのだ。一体、私にランナーズハイは訪れるのかと訝りつつも、一箸一箸少なくともゴールに近づいているはずだと言い聞かせつつ前進し続けるしかないのだ。その日は、涼しくは無いまでも随分暑さは和らいでいたのだが、少し食べた頃から汗が額から顎からポタポタと滴ってきた。背中を汗が流れるのが分かる。一体どこが折り返し地点かも全く分からない状況の中、「これは絶対完食できない」との予感が確信に変わりそうになるのを何とか振り払う。
「もうダメだ」と何度目かに思った時、「少なくとも半分は食べた」とようやく実感できる程度に麺が減っているのが分かった。その時から、殆どゼロを指していた「ひょっとしたら完食できるかも」ゲージの針が少しずつ振れ始めた。そこからは一気呵成に、何てことは全然無く、重い箸を引きずるように、一口一口何とか食べ続けるのみであった。「残り三口、二口、一口、ゴール!!」という訳で、最後まで苦しみながらも何とか(麺だけ)完食することが出来た。
完食は出来たものの、いかんせん苦しい。しかし、外は依然行列なので、腹がこなれるまで休んでいるというわけにも行かない。で、「ごちそうさま」と言い残して立ち上がるわけだが、某社までの道のりの苦しく遠いこと。取りあえず、喉が渇くので、何か飲もうとコンビニに入ってお茶を買うものの、お茶を飲むとますます満腹感が増すという実に苦しい状況。さらに、受付のお姉さんに自分の名前を告げようとした途端、あまりのニンニク臭に自分でも呆れるほどだ。
大して暑くも無い日に汗をダラダラ流すニンニク臭いリュックサックの中年男に対しても、「○○宛でございますね。お待ち致しておりました」と笑顔で答える受付嬢。二郎のラーメンよりこちらのプロ意識に感動した(笑)。