赤木順彦さんのこと

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今年の10月4日に43才の若さで亡くなられた赤木順彦さんのことを書かずに年を越すわけにはいかないと思いながらもとうとう大晦日になってしまった。

私がここでブログを書いているのも彼のおかげだ。2003年の4月の花見の時に「ブログを始めろ」としつこく言われて始めることにしたのだった。このブログが置かれている'galileo.co.jp'というのは彼が創業した株式会社ガリレオのドメインだ。

1995年に彼の著書である「誰でもつなげるインターネット」という書籍に当時私が勤めていた会社のインターネット接続無料アカウントを同梱することになったのが出会いであった。

出版元がたまたまNTT出版だったので、同じNTTグループの接続サービスのアカウントを添付しようということになり企画会議に呼ばれたのだが、当時のうちのサービスは(お金を払ってくれていたお客さんもいた手前言い難いのだが)至らないところだらけだったのだ。普通のISPなら当然できそうな事を求められても「えーと、それはちょっとまだ...」というようなことばかりだったのだ。

一方、赤木さんは1993年の時点で既に「インターネットに会社を実装する」というコンセプトを実践していた人なのだ。そういう人の書籍に「あれもできない、これもできない」というサービスをバンドルしてくださいとお願いするのはものすごく心苦しかったのだが、彼はその全てを「別にいいですよ」と満面の笑顔で受け入れてくれたのだ。当時のインターネット業界はちょっとした至らなさをあげつらう古参者及び似非古参者に満ち満ちていたので、赤木さんの人柄には本当に癒される思いがしたものだ。

赤木さんはとても新しもの好きで、面白いと思うとすぐに飛びつき、ちょっとした初期実装くらいまでは自分でサクサクと作って「どうです、これ面白いでしょう」とこれまた満面の笑顔で人に披露して回るのが大好きだったのだ。それに触発されて、彼とインターネットを使ったいろんなビジネスのアイデアについて何度も話し合ったが、こちらが出したアイデアを彼に否定された記憶がない。もちろん反応の強弱はあるのだが、一番いまいちな時でも面白がって笑ってくれるし、本当に気に入った時には「うちの会社で好きにやって下さい」と実印と印鑑証明を黙って差し出さんばかりの勢いなのだ。だから、そんな彼の周りにはいつも新しいビジネスのネタが集まってきていた。メディアへの露出の多寡で知名度はずいぶん異なるが、伊藤穰一と非常によく似た雰囲気だったと思う。実は「ブログを始めたのは彼のおかげ」などというのは彼が私に与えた影響の中では些細なものだ。最大のものは「NTTを辞めた」ということだ。その決断はもちろん彼の影響だけではないのだが、彼の仕事のスタイルを含む生き方から、インターネット時代にはこんな形も「あり」なんだと思わされたことに少なからず気持ちを後押しされたのは間違いのないところだ。

そんなふうに、自分の好きな新しいことをビジネスにして、そうすることで自分の好きな新しいことがますます自分の周りに集まってきて、という良い循環があって、彼もいつもにこやかに楽しそうにしていたのだ。強いて彼が得意でなかったことを挙げると「大儲けの仕組み作り」なんていうことは得意ではなかったが、それはそんなことには興味がなかったからだ。

が、幸か不幸か「インターネットで大儲け」できる時代が来てしまったのだ。いや、インターネットで大儲けできる時代までは彼も幸福だったのだ。こんな事でこんな儲け方もできるんですよ、なんてことも我が事のように楽しげに語りつつ酒を酌み交わしていたのだ。問題は「インターネットで『有象無象まで』大儲け」できる時代が来てしまったことだ。細かいことはよく分からんし、あれこれ詮索and/or分析してみたところで詮無いのだが、何かその辺からちょっとだけ歯車が狂ってきてたように思う。

今更ではあるのだが、せめて彼があの世で心安らかでいられるようにLet it be関西弁訳を贈りたい。

わてにどないせぇっちゅうねん! ってなったら、
聖母マリアはんが来てくれてな、
ええこと、ゆうてくれまんねん。「それで、ええやないか」
ドツボで、目の前まっ暗闇のわての、まん前に立たはってな、
ええこと、ゆうてくれまんねん。「それで、ええやないか」。

「ええやないか、かめへん、かめへん」
「ええやないか、かめへん、かめへん」
ほんま、ええこと囁いてくれまんねん。
「それで、ええやないか」

あんた、周りの人には「かめへん、かめへん」ってメッセージ送り続けてたやんか。わしもそれで随分助けられてんで。自分にも同じ事言うたらんとあかんやん。アホ。

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今週か来週、その赤木さんが御縁で実現した
堀江さんインタビュー、桜子ブログだけでアップする予定ですよ~

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このページは、ueharaが2008年12月31日 22:19に書いたブログ記事です。

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