年末年始

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去年最後に読んだ本はジャック・フィニイの「ゲイルズバーグの春を愛す」。これはノスタルジーなどというよりも、もっと強烈な過去回帰願望の横溢する作品集。初めて読むとは思えないが、家に本は見当たらないし、捨てた記憶もないし、と本にまつわる記憶も作風に引きずられてしまっているようだ。

その過去と現在の入り混じるジャック・フィニイ気分が残っていたことに加えて、「中内さん」のエントリで阿佐田哲也について思いを巡らせたこともあり、新年に実家に帰った際に、昔買った「麻雀放浪記」を再読してしまった。初めて読んだ時(高校時代)は出てくる東京の地名は全くピンとこなかったが、今読むと、「ああ、あそこのことだったのか」と改めて納得。とは言っても、戦後の闇市のころの話なんで、本当の意味でピンときたわけじゃないけどね。
で、さらにそんな気分を引きずっていたら、初詣の帰りにたまたま覗いたブックオフで「東京消えた街角」「東京懐かしの街角」という2冊の写真集を見つけて、即購入してしまった。昭和40年代の東京の風景が満載のこの写真集、当時の東京など全く知らない私の目にも実に懐かしい。その中で印象的だった写真の一つが下町の商店街が人でごった返している写真。この頃は、大型量販店や通販との競争にさらされることもなく、地元の電気屋は地元でただ一軒の電気屋としての地位を謳歌でき、「手に職を付ける、定職に就く」ことの有効性には疑いの余地もなかったのだろう。
『懐かしの街角』の時代よりは、確実に坊や哲的なものに対する免疫が必要とされているように思うんだが、免疫系が活性化される環境は確実に減少してきている気がするし、「しまじろう」みたいにあんなに正しいことばかりを小さい頃から教え込まれていて、いきなり厳しい現実を見ればニートにもなろう、などとジャック・フィニイ気分と現実を行きつ戻りつする年始であった。

というわけで、本年もよろしく。

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コメント(1)

東宝のゴジラ・シリーズの古いのを観ても、昔の様子が「無体験ノスタルジー」に訴えかけて参ります。

ウィンカーが方向指示器で、ハードウェアだったのは、かろうじて実際の記憶にありますが。。。

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このページは、ueharaが2005年1月 6日 17:16に書いたブログ記事です。

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