僅かとはいえ社会正義がなされて喜ばしい件について

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まさに人間のクズの所業と呼ぶにふさわしいレックスHDのMBOについてはこのブログでも過去に取り上げたが(こことかここ)、不当に安い買い取り価格を不服として一部株主が起こしていた訴訟が5月29日結審した。最高裁が抗告を棄却して、原告(株主)側の勝訴が確定したのだ。

裁判により決定された買い取り価格は336,966円で、TOB価格の23万円よりも10万円ほど高い。
ここで、この23万円という買い取り価格が以下に酷いものであるかという点をおさらいしたい。

rexgraph.jpg

訴えを起こした株主達が問題にしていたのはTOB価格算出に当たって、2006年8月下旬の業績下方修正後の1ヶ月間の平均株価を基準としていたことだ。通常はTOBに至るまでの6ヶ月とか12ヶ月の平均を用いることが多いのに、下方修正により安くなった後の株価のみをTOB価格の算出に用いるのは不当であるというものである。「たまたま下方修正を強いられる経営状況であった」という前提で考えても不当と判断されうる平均値算出期間であるのだが、「こいつら、TOB価格を下げる目的で、わざと大幅な下方修正をしたんとちゃうか」と疑うに足る状況証拠があるので、どうにもこうにも許し難いのである。その状況証拠とは、TOBの受け皿になったファンドが8月下旬の業績下方修正の直前に設立されていた、というものである。下方修正の時点では既に「少しでも業績を悪く見せたい、少しでも株価を下げたい」というインセンティブが働く状態にあったのである(実際、東京高裁も経営陣が実態よりも悪く見せて株価を下方に誘導したことを推認している)。

そこを認めたにしては、336,966円はちょっと安い気がするが、裁判所が強制力を持って決定する価格というのは合理的に推定される価格帯ど真ん中というよりは、これを下回ると明らかに不当、というあたりであるべきかなという気もするので、まあ妥当であろう。

何よりも残念なのは、この判決の恩恵を受けるのが株数にして784株、レックスの発行済株式数の0.3%に過ぎないという点である。レックスが余分に支払う買い取り額は高々8000万円である。TOBで彼らが買い集めた20万株全てに適用されていれば200億円くらいの損失を与えられていたんだけどね。その点だけが残念であるが、本判決が今後今回のような非道なMBOに対する抑止力となってくれるであろうことは大いに評価したい。

本エントリの作成に当たっては以下のサイトを参考にさせていただきました。

アドバンテッジ被害者牛角会ホームページ
レックス事件、勝訴確定。正義が勝った。
レックスHK事件に対する最高裁決定(東京高裁判断を認容)
レックスホールディングスMBO株式買取価格


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コメント(1)

コメントありがとうございます。
社会正義の一翼をになうことができ、嬉しいです。

さて、うえはらさんご指摘のように、救済されたのは一部の株主だけです。本当の被害者は公開買付に応募した方だと思います。アドバンテッジ被害者牛角会のブログで、第二次訴訟の募集をしてます。

kanebo1620@tob.name

http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65322657.html

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このページは、ueharaが2009年6月 5日 10:28に書いたブログ記事です。

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