「加圧トレーニング」がいんちき臭いことになっている件について

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初めて「加圧トレーニング」という言葉を耳にしたのは、3-4年前に神田のスポーツ用品店をブラブラと見て回っていた時だった。その時は、何となく効果のありそうな能書きに釣られて、加圧トレーニング用のウェアとやらを「買ってみようかな」と思ったのだ。が、「ちょっとそう思った」という以上の盛り上がりも無く、何となく見送られて早数年状態だったのだ。

で、最近になって近頃すっかりテレビで見かけなくなった松本伊代の旦那が「加圧トレーニングでぼろ儲け」というのをテレビで見て「へえー、あの時のあれそんなに流行っとったんや」と感心しつつも松本伊代の旦那を儲けさせる気は無いので、別段購買意欲が湧くでもなくスルーしていたわけだ。

そんなある日、某知り合いが「加圧トレーニングを始める」というので、「おー、こんな身近に始める人がいるってことは、やっぱり流行ってたんや」と興味津々で話を聞いて見たところ.....

トレーニングの値段がバカ高い!!

何で腕にゴムを巻いて普通の運動をするだけなのにそんな値段なのかと訝ると、特別な資格をもったインストラクターでないと指導してはいけないとのことらしい。「加圧トレーニングは危険だから..」ということらしいが、「危険だから厚生省の認可が必要」とかいうのなら分かるが、「危険だから発明者に上納金が必要」は理屈が通らないでは無いか。
また、自分で器具を買ってもいいけどその器具がバカ高くてウン十万とか百ウン十万とかするらしい。オムロンの血圧計をちょっと改造すればできそうな機械とはとても思えない恐ろしい値段である。

というような展開に釣られて一体何が起こっているのかと加圧トレーニング本部様のWebサイトを覗いて見た。

サイトには、とんでもない値段の器具とか「指導資格が必要」という能書きだとかが満載だが、一番の見所は彼(ら)の保有する特許についてのページだろう。

ページの一番上に誇らしげに、特許番号:特許第2670421号、発明者:佐藤義昭とあるが、これらは事実でこの番号に該当する特許は実在し、その発明者は佐藤義昭である。
が、その下に書いてあることはウソだらけである。以下、正誤表形式で記す。

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<誤>加圧トレーニング (血流制限下での筋力トレーニング)方法に平成9年6月、日本国特許庁から 自然法則を利用した技術的思想の高度な発明として、それを保護・奨励する特許が下りました。
<正>加圧トレーニング(血流制限下での筋力トレーニング)方法には特許は下りていません、というか下りるはずがありません。なぜならばそのような方法は特許出願されていないからです。特許出願されたのは「筋力トレーニング用の緊締具」です。

<誤>この特許付与(認可)により、加圧トレーニングの理論は 特許権により保護され、筋肉への血流を制限した状態でのトレーニング方法は、発明者:佐藤義昭に特許使用の申請をし、 許諾を受けなければなりません。
<正>「この特許付与」というのが前項で示したように誤りです。従って、「『加圧トレーニングの理論』は特許権により保護」されていません。保護されているのは『緊締具』です。

<誤>加圧トレーニング方法については、基本特許(注1)が成立しています。
<正>「加圧トレーニング方法」については特許は成立していません。また、「基本特許」というのは本発明を発展させた「応用特許」が現れた場合等に相対的に用いられることがありますが、ここでは非常に包括的な範囲の特許であるかのような誤った印象を与えるために用いられているように思われます。

<誤>加圧トレーニング方法は、個人的に利用する場合などの一定の例外(注2)を除いて、佐藤義昭と、佐藤義昭からライセンス(注3)を受けた者のみが利用できます。
<正>まあ、これは「無断駐車は5万円申し受けます」と同じだと思えば「誤り」ってほどでもないのかな(笑)?まるで、特許で保護された権利であるかのごとく書いているのは問題だと思うけど。

<誤>他人のために加圧トレーニング方法を利用する場合には、特許権侵害(注4)の問題が生じますので、トレーナー、スポーツのコーチなど、他人を指導する立場にあたる方は特に注意してください。
<正>特許は「筋力トレーニング用の緊締具」に対してのものなので、「筋力トレーニング用の緊締具」を製造販売すれば特許権侵害を問われるでしょうが、トレーニング方法を利用することが特許権侵害に当たるとは考え難いです。

<誤>発明の名称:筋力トレーニング方法
<正>発明の名称:筋力トレーニング用の緊締具

<誤>【特許請求の範囲】
筋肉にしめつけ力を付与するための緊締具を筋肉の所定部位に巻き付け、その緊締具の周の長さを減少させ、筋肉に負荷を与えることにより筋肉に疲労を生じさせ、もって筋肉の増大を図る筋拘トレーニング方法であって、筋肉に疲労を生じさせるために筋肉に与える負荷が、筋肉に流れる血流を阻害するものである筋力トレーニング方法。
<正>【特許請求の範囲】
【請求項1】 筋肉の所定部位を周囲から締め付けるための締め付けループを所望径サイズに固定的に形成するためのロック手段を備えた帯状ないし紐状の筋力トレーニング用の緊締具。
【請求項2】 締め付力の表示手段が接続されてなる請求項1記載の筋力トレーニング用の緊締具。
【請求項3】 少なくとも皮膚に接触する側に、皮膚を保護するための素材を配してなる請求項1~2記載の筋力トレーニング用の緊締具。
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加圧トレーニングの有効性について論じるつもりはないが、欲の皮の突っ張った方々が大活躍しておられるのは間違いの無いところかと...

<2008/9/2 01:32 追記>
上の記事のお詫びと訂正を次エントリに掲載しました。

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このページは、ueharaが2008年8月26日 18:36に書いたブログ記事です。

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