有限責任

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日本の場合、ベンチャーの資金調達は個人保証を入れて、金融機関から借入れを行う場合が多いため、起業に失敗すると経営者は私財を失うことが多く、再起が難しい。
一方、アメリカではベンチャーに対する直接金融が発達しており、エクイティファイナンスが主流であるため、起業に失敗しても私財の全てを失うことは少なく、起業家にセカンドチャンスが与えられることも多い。

なんてことが良く語られるが、本当だろうか?起業に失敗するとはそんなに軽いことなのか?
と、考えさせられる出来事があった。

彼の死に彼の仕事が及ぼした影響については知る術も無いが、かなり悲観的にならざるを得ない会社の経営を引き受けて丸3年である。何の関係も無いと考えるのも無理があるというものだ。CoSine Communicationsという会社は今回不幸にして亡くなった彼が起業した会社ではない。彼は、IPO後にリリーフで立て直しを引き受けただけだ。しかし、彼の在任中に業績が上向くことはついぞ無く、あまり有利とは言えない条件ながらM&Aがようやくまとまり、幕引きが図れるとホッとした矢先の出来事であった。もっと早くclose downしていれば、という囂々たる非難の中、辛うじて価値がゼロになる寸前で食い止めた、というdealであったため、肩の荷を降ろして楽になれる状態ではなかったのかも知れない。投資家の金を預かる、という立場はやはり相当なプレッシャーの掛かるものなのであろう。「自分一人が破産すれば終わり」の個人債務者とどちらが辛いかというのは一概に言えるものではないと思う。

彼の前任でCoSineの創業者は先日私に言った。「もう、僕に金を出す投資家なんていない」CoSineの前に3社もの会社を成功裏にExitさせ、CoSineも最後はこんな形になったもののIPOまで持っていった男のセリフである。しかも、まだ41歳の若さだ。彼は自己資金のみでやれる小さなビジネスを営みつつ、時間の大半は教会に費やしているという。

冒頭のエクイティファイナンス云々は一般論としては真なのかも知れないが、自分の身近な例を見る限り、「そんな甘いもんじゃない」と痛切に感じる。

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コメント(1)

突然の死を知り、追悼の気持ちで一杯です。
2桁、3桁の他人様のUS$Mに責任を持って会社を営み、成功させるのは想像を絶する厳しさと思います。
48歳で、起業した会社をIPOに導き、$8Bで古巣の企業に買わせた上司は、成功し続けなきゃ成功者ではいられないというオーラが漂っています。
その人のために働く事は出来ても(今でも働いていますが。)、その人には到底なれそうにもありません。

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このページは、ueharaが2005年1月18日 13:36に書いたブログ記事です。

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